正しいしつけは子どもへの大切な贈り物


人吉幼稚園
平成27年9月16日



皆さん。おはようございます。ただいまご紹介いただきました中川でございます。よろしくお願いします。
 本日、家庭教育について話をしますので、家庭教育についての専門家とお思いかも知れませんが、専門的に研究したわけではありません。家庭教育のエキスパートでもありません。2人の息子の父親であり、3人の孫の祖父です。息子達が思うように育たずに悩みました。また、思いもしない成長に喜んだりもしました。子育てに一喜一憂してきた者の一人です。毎日が息子達と格闘でした。 3人の孫娘は、長男の娘が2人。上が高校2年生です。下が中学1年生です。次男の娘は今、3歳5ヶ月です。息子や孫との関わりの中で気付いたこと、実践してきたこと、長年教員をしていましたのでその間、子どもや保護者との関わりの中で考えたり指導してきたこと、9年間社会教育関係の仕事をして家庭教育の在り方について研修を受けたり、議論してきたましたのでその時、感じたこと等を基にして、皆さんと一緒に子育てについて考えていきたいと思います。
 皆さん、子育てについて悩みが全くない方いらっしゃいますか?
 悩みや不安がある方いらっしゃいますか?
 子育てで悩みや不安がない方なんていらっしゃいませんよね。みんな悩みや不安を持っています。
その悩みや不安を相談する相談相手はここにいらっしゃる皆さんお一人お一人です。同じ世代の子の子を持つ親同士が相談相手です。中には、小学生や中学生のお子さんがいる方もいらっしゃるかも知れません。いろいろな体験談を聞くことができますよ。悩みや不安を共有し合いましょう。そして、本幼稚園の高宮園長をはじめ諸先生方です。一人で悩まないで、相談しましょう。気軽に相談に乗っていただけると思います。
 私の3歳5ヶ月になる孫娘は、言葉が少し遅かったものですから心配しました。母親は、保健師さんに相談もしたようです。「そんなに心配しなくてもいいですよ。身体が順調に成長していますから言葉も出てきますよ」と言われて安心したようです。今では、よくおしゃべりします。今の心配事は、排泄です。小の方は、きちんとできるようになりました。大きい方がトイレではできなく、紙おむつでしているようです。近くの保育園の園長先生に相談したようです。これも、「心配しなくて大丈夫ですよ。小の方がトイレでできるならそのうちできるようになりますから」とアドバイスをもらって少し安堵したようです。
 現在、私は私設保育園長です。次男の娘一人ですが。
 冒頭お話ししましたように、本日皆さんと一緒に子育てについて考えるもとになるものは、私の2人の息子との格闘、そして3人の孫娘との関わりです。
 息子達の子育ては大変苦労しました。その一つですが、次男が高校2年生の時だったと思います。次男はテニス部に所属していました。対外試合ではなかなか勝てずにいました。ところがある試合で勝ったのです。初めて対外試合に勝ったので、祝勝会を熊本市内の食堂で開いたのです。ご飯をみんなで食べて祝おうと思っていたそうですが、誰言うともなく「ビールを飲もう」となったのだそうです。ビールを飲んでいい気持ちになったのでしょう。帰りに、あろうことか部員全員が立ち上がって、「○○高等学校万歳!」と万歳三唱して別れたそうです。
 それを見ていたお客さんが、学校に通報したのですね。翌日、保護者召喚です。親子ともども神妙な顔で待っていますと、校長先生がお出でて、「天網恢々疎にして漏らさず」という言葉を話されました。中国の老子の言葉です。「天の張りめぐらせた網の目は粗いが、悪いことを犯した人は一人も漏らさず取り逃さない。天道は厳正であり、悪いことをすれば必ず報いがある」という意味です。息子達はあまり意味は分からなかったようですから、家に帰ってその意味を教えました。息子はかなりこたえたようでした。1週間の謹慎処分でしたから。
 その他にもいろんなことをして親を悩ませました。なかなかまっすぐに歩いてくれないのです。そのたびに、子育てについて考えました。これが、「子育ては親育ち」と言うのでしょうね。また、時には、困っている人を助けたり私たちが思ってもいないようなことをして喜ばせたりもしました。
 先日、3歳5ヶ月の孫娘にサンダルを買ってやろうと、近くのスーパーに行きました。店の中に入るや、孫は、一目散におもちゃ売り場に行きました。ほとんど行ったことがない店ですよ。子どもの目線の高さにおもちゃが並べてあるのです。アンパンマンやキティーちゃんの絵が描いてある靴や遊び道具がいくつも展示してあります。孫は、それを一つ一つ手に触っています。とても欲しそうです。私が、「今日はおもちゃを買いに来たのではない。サンダルを買いに来た。サンダル売り場に行こう」と手を引いても動こうとしません。いろんなおもちゃを手にとって確かめています。「こんなに欲しがっている。買ってやろうか」と何度も思いました。でも、ここで孫に負けてはいけないと心を鬼にして買ってやりませんでした。30分近くおもちゃ売り場にいましたが、孫は買ってはもらえないとあきらめたのでしょう。サンダル売り場へ足を向けました。躾は時には心を鬼にしなければならないときもありますね。
 おもちゃを買ってやったら、孫は駄々をこねたり欲しそうな行動をすると買ってもらえると学習します。だから子育ては、子どもと親との格闘なのですね。子どもと祖父母との格闘なんですね。特に祖父母は孫には弱いですから。
 私が益城町で社会教育指導員をしていたときのことです。益城町では公民館講座で学ぶ人がとても多く、受講受付を体育館で朝早くから夕方まで行います。午後の受付が始まって間もなく、おじいさんが3歳位の子どもを連れてお出でました。受付を済ませて帰られるとき、玄関まで送りました。「お孫さんですか」と聞くと「そうです」と応えられ、「○○、靴は自分で履ききるど!」と言ってお孫さんが靴を履くのをじっと見ておられます。子どもさんは四苦八苦して靴を履いています。どうにか靴を履くことができました。「あぁ、あ、右左反対に履いてしもうたね。よかたい。歩かるっど」と言ってお孫さんの手を引いて帰っていかれました。
 しばらくして、若いお母さんが同じ年頃と思われるお子さんを連れてお出でました。そして受付を済ませて帰るとき、「はい、○○ちゃん、あんよ出して」と言われました。子どもさんは、玄関に腰を下ろし、足を前に出してお母さんから靴を履かせてもらいました。
 両方とも「靴を履く」行為です。しかし、小さな子どもにとってどちらの靴の履き方がその後に生きて働くでしょうか。皆さんのご家庭の子育て方針は、おじいさん派でしょうか、お母さん派でしょうか。
 長男の娘が3歳位の時、私が「○○、新聞を持ってきて」と言うと、「自分のことは自分でしなさい」と言いました。日頃、親からそのようなことを言われていたのでしょうね。このとき、父親が「おじいちゃんに、新聞を持ってきてあげなさい。それがお手伝いだよ」と孫を諭しました。これが躾ですね。
 本日は、演題を「正しいしつけは子どもへの大切な贈り物」としました。
 躾とは裁縫の躾と同義語です。
 仕立屋さんに聞いたことです。「着物を縫うときには、縫い目が狂わないように、まず仮にざっと縫い付けていきます。そして、本縫いが行われ、仕立て上がると、躾糸を抜きます」と。
 縫い上がった着物は、躾糸で仮縫いをしたなどなかったように見えますが、仕付け縫いをしないと、型がすぐに崩れよれよれになるそうですよ。
 教育で言う躾はここからきているのです。子どもを一人前に育て上げていくために、まず躾縫いにあたる基本的生活習慣を身につけさせます。「おはよう、ありがとう、ごめんなさい」はその第一歩ですね。躾がすっかり身につき、ごく自然に振る舞うことができるようになると、躾糸が抜かれるように、自分の判断で行動を選択し、世渡りすることになります。
 今、子どもたちを見ていると、躾縫いがされたのだろうか、躾糸はとれているのだろうかと思うことがあります。
 大学の先生に聞いたことです。今大学で、学生の中で先生に対して「宿題を出してください。何を勉強していいか分かりません」と言う学生がいるそうですよ。大学というところは、自分で学ぶところです。知的な面からの学習習慣、徳育の面からの生活習慣、体育の面からの運動習慣は幼児の頃から躾けたいものです。
 皆さんのお子さん達は、「自分でする」とよく言うでしょう。私の孫も、何でも自分でしたがります。食べにくいものを食べるときなど、箸をそえてやろうとすると、私の手をはねのけます。雲底で遊ぶとき、手を添えてやると、「自分で登る」と言います。雲底でぶらんぶらんするときも、手を添えようとすると、「しないで」と言います。それなのに力が尽きて落ちそうになると、「じじ、たすけてー」と言います。
 私はこの「自分でする」を大事にしたいと思います。
 幼稚園児は、上靴を自分で洗うことはできないと思いますが、小学校の家庭教育学級に呼ばれて、話をするとき、必ず尋ねることがあります。「上靴は、お子さんが自分で洗いますか。お母さんが洗っていますか」と。かなりの家庭がお母さんが洗っています。「どうしてお子さんに洗わせないのですか」と尋ねると、「汚れがきれいに落ちない」とか「洗うのに時間がかかる」という言葉が返ってきます。汚れがきれいに落ちないでもいいんです。靴底に泥がついていなければ。靴のにおいが取れないでも、それはそれで学習になるのです。お母さんが洗うと臭いも取れるのに、自分で洗うとどうして臭いは取れないのだろうと思い、子どもは洗い方の工夫をします。多少時間がかかってもいいではありませんか。体験の中から子どもなりによりよい方法を工夫するのですから。私はこのことから、「手を離して、目は離さずに」と訴えています。この逆が多いのです。目は離して、手を離さないことが。
 わたしが校長時代、担任から次のような話を聞いたことがあります。
 新1年生の学習準備から見えたことです。。
   母親: 「私が鉛筆を削って筆箱に入れてやると子どもが怒ります。私は悪いことをしているのでしょうか。」
   担任:「世話のし過ぎです。校長先生がいつも言っておられるでしょう。子どもができることは子どもにさせてください。」
 まさに子どもから手を離しきれない例です。
 躾の基本に朝起きがあります。朝起きは、大切な躾の一つです。
  親:「○○ちゃん、6時半よ。起きるの? 起きないの?」
  子:「眠たい。まだ寝ていたい。」
 朝起きは、子どもの自主性に任せることでしょうか。「起きるの?起きないの?」ではありません。「起きなさい!」ですよね。
 私たちの身体の体内時計は、25時間制です。私たちは、朝の陽光で体内時計を24時間にリセットしているのです。リセットできないでいると、だんだん昼夜が逆転してしまいます。不登校の子どもの中には、この昼夜逆転現象の子どももいます。私がいじめ不登校アドバイザーをしているとき、不登校の子どもの家庭を訪問することがありました。昼でもカーテンを引いて薄暗い部屋でテレビを見たり、ゲームをしたり、寝ていたりしている子どもがいました。
 もちろん、不登校の子どもの中には、前の晩は「明日は学校に行く」と言って、明日の準備をして、朝、ランドセルを背負って玄関を出ようとすると、身体が固まってしまって足が前に出ないという心因性の子どももいます。ですが、人は、朝、自分の体内時計を24時制にリセットしなければ快適な生活はできません。
 今から10年ほど前、文部科学省が「早寝早起き朝ご飯運動」を提唱しました。これは、子どもたちが健やかに成長していくためには、適切な運動、調和のとれた食事、十分な休養・睡眠が大切だからです。そして、子どもが「早寝早起き朝ご飯」の生活習慣を身に付けていくためには家庭の果たすべき役割が大きいからです。当時の子どもたちを見ると、「よく体を動かし、よく食べ、よく眠る」という成長期の子どもにとって当たり前で必要不可欠な基本的生活習慣が乱れていたのです。このような基本的生活習慣の乱れは、学習意欲や体力、気力の低下の要因にもなります。
 今お話しましたように、子どもたちの健やかな成長には、「早寝早起き朝ごはん」をはじめとした規則正しい生活習慣が大切です。
 昔から「寝る子は育つ」と言われているでしょう。睡眠には心身の疲労を回復させる働きのほかに、脳や体を成長させる働きがあります。
 子供の成長ホルモンは眠っている間に活発に分泌されます。それも真夜中の0時から2時頃が最も分泌量が多いと言われています。この時間帯に子どもが熟睡していることが大切です。ですから午後9時ごろには就寝させることが大事なのです。
 また、朝の光を浴びると、脳の覚醒を促す脳内ホルモンであるセロトニンが活発に分泌されます。その結果、頭がスッキリと目覚め、集中力が上がります。これが体内時計を24時制にリセットすることです。
 私たちの体は寝ている間もエネルギーを使っています。朝起きたときは脳も体もエネルギーが不足した状態なのです。体温が最も低いのが朝起きたときです。お母さん方の中には、基礎体温を計っている方もおいでかも知れません。それで、朝、様々な栄養素を補給し、体温を上げ、脳を活性化させ、しっかり活動できる状態を作ることが大切なのです。私たち人間は、昼行性動物です。脳は午前中が最も活発に動いています。皆さんが学ばれた小・中学校時代を思い出してください。時間割表を思い出してみてください。国語や算数・数学、理科、社会などはたいてい午前中にあったでしょう。午後は、体育とか図工とか、家庭とか主に身体を動かす教科が多かったと思います。これも人が昼行性動物であることと関係があるのではないかと思います。
 自尊感情について考えてみたいと思います。これまで自尊感情という言葉は、聞かれたことがあるでしょう?始めて聞いたという方、いらっしゃいますか?ほとんどの方が聞いたことがおありですね。別の言葉では、自己肯定感といったり、横文字でセルフ・エスティームともいわれています。また、「見えない学力」という人もいます。
 私は自尊感情とは、「俺の家族は俺を愛し、信頼している。先生は俺を応援している。友達は俺のことを分かってくれ、俺を大事にしてくれている。俺ってたいしたもんだ。捨てたもんじゃなか。この俺を大事にするぞ!」という感覚だと思っています。お子さん達の心にこのような思いを育んでいきましょう。
 自尊感情を形作っているものの中に「包み込まれ感覚」というものがあります。これは、読んで字の通り、子どもが「自分は家族から愛情一杯に包み込まれている」と思う感覚です。この感覚を毎日の生活の中で実感させましょう。シドニーオリンピック女子マラソンで金メダルを取った、高橋尚子さんを育てた小出監督の言葉に次のようなものがあります。


 母は、私が小学生になっても洟(はな)を垂らしていると、口ですすってくれた。
 やんちゃばかりしてきた僕が、道を外さずに生きてこられたのは、親に十分愛情を注がれた経験があったからなのだろう。


小出さんは、母親からの愛情が自分が道を外さずに生きてこれた力といっています。
また、集英社の「ぽっかぽか」に深見じゅんさんの文があります。


 子どもはね、ごはんを食べる時、愛情も一緒に食べるのよ。思い出も一緒に食べるのよ。
 だから、他の家事は疎かにしてもいいから、ご飯だけは自分で作ってあげて・・・。

 先日、孫が父親と一緒に歩いている姿を見ました。スキップしながら楽しそうに歩いているのです。スキップは、気持ちよくて、心が満たされているときに自然と出てくる弾むように歩く動作です。お子さんを抱きしめて、「愛している」のメッセージを送り、お子さんに「包み込まれ感覚」を数多く実感させてください。
 また、「人の役に立った、人から感謝された、人から認められた」という自己有用感を数多く実感させましょう。私がいつも提唱しているものの一つが、朝のカーテン開けをお子さんの仕事として責任を持ってさせる事です。そして、「○○ちゃんがカーテンを開けてくれるから、太陽の光が入って気持ちいい」と、仕事をしたことを認め、ほめ、感謝してください。これが、「自分も家族の役に立っている」という自己有用感を育むのです。
 熊本県教育委員会では、「認め、ほめ、励まし、伸ばす」を合い言葉に教育活動を展開しています。人吉幼稚園でもそうでしょう。これは学校や幼稚園だけの専売特許ではありません。家庭でも是非このことを実践して欲しいと思います。ただ、この前提には、してはいけないことをしたとき、自分のわがままでしているときは、「厳しく叱る」があります。このことは忘れないでください。
 また、遊びや生活の中で、ほめたり認めたりしながら、社会性を身につけさせましょう。社会性を身に付けさせるための基本的な躾をしましょう。例えば、各家庭でこれだけは守ろうと決めてある家庭のルールをしっかり守らせること、これが社会のルールを守ることにつながります。これがあいさつや善悪の判断、わがままを言わない、自分にできることは自分でするなどへと発展します。
 3歳5ヶ月の孫の愛読書、愛読書といっても私が読み聞かせをするとき、「これ読んで!」と必ず持ってくる本ですが。「は、は、はのはなし」、「げんきなマドレーヌ」です。孫は食後、歯を磨くとき「は、は、はのはなし」の本を見ながら歯を磨いています。
 今、どこの学校でもPTAや読書グループの方がボランティアで読み聞かせをしています。本園でも、読み聞かせをしていらっしゃるでしょう。しかし、親や家族が読んで聞かせることが読み聞かせの基本です。小さい子であったら膝の上に抱っこして、少し大きい子であったら座らせたりして、家庭でたくさんの本を読んで聞かせて欲しいと思います。
 現在、中学1年生の孫は「赤ずきんちゃん」が大好きでした。必ず「これ読んで!」と持ってきていました。読みを進めていくと、オオカミが赤ずきんちゃんを食べる場面になります。「こわい」と言って手で顔を覆います。しかし、指を少し開いて、指の間から絵本を見ていました。
 そのときのことを朝日新聞の「声」に投稿したものを資料につけています。読んでみます。


朝日新聞「声」 平成19年3月27日掲載

                幼児に読んで見せたい童話

 グリム童話「赤ずきんちゃん」を4歳になる孫に読み聞かせると、顔を伏せて「おおかみがこわい」と言いながらも、何度も「もう一度読んで!」とせがむ。読み終わると「あー、よかった」と胸をなで下ろしている。
 先日、他の童話を読み聞かせようと、孫と近くの公立の図書館へ行った。児童コーナーは、創作絵本が多く、日本の昔話、アンデルセン童話、グリム童話などの絵本は少なかった。
 「赤ずきんちゃん」に限らず読み伝えられた名作には、子どもを引きつける魅力がある。単純明快なストーリー、善人と悪人の際だつ対比、一つ一つの事実の積み重ね、ハッピーエンド。リズム感のあることばで子どもを空想の世界に引き込み、夢を持たせてくれる。幼い子どもの心に、生きるための知恵や勇気をしみ込ませる。
 物語の主人公と一体となり、ハラハラ、ドキドキ、ワクワクしながら得た感動は、大人になっても夢をはぐくみ心を豊かにさせる。
 幼児にはたくさんの名作絵本を読み聞かせてやりたい。名作絵本の増冊を図書館に望む。

 3歳の孫が昼寝をするとき、昔話をして聞かせます。「桃太郎」の話です。もう、すっかり覚えてしまいました。


 むかし、むかし、あることろにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんはやまへしばかりに、おばあさんはかわへせんたくにいきました。おばあさんがかわでせんたくしていると、おおきなももがどんぶらこ、どんぶらことながれてきました。おばあさんはてびっくりしました。おじいさんとたべようとももをもってかえりました。おうちで、ももをきると、なかからあかちゃんがでてきました。おじいさんとおばあさんはびっくりしました。ももからうまれたももたろうとなまえをつけました。

 これから先は、話しません。鬼が怖いのです。
 読み聞かせやお話しは、子どもの想像力を膨らませます。また、読み聞かせをしているうちに、子どもは自然と文字を覚えるでしょう。
 賢い子どもに育てる心がけについてお話しします。熊本県教育委員会社会教育課長は、文部科学省からの出向です。7月で文部科学省へお帰りになりましたが、その方は、文部科学省で学力調査・学習状況調査に関する仕事をしておられました。その方がよく言っておられたことです。


 ○子どもの育ちに深い関心がある家庭の子どもは学力が高い傾向にある。
 ○基本的生活習慣が定着している子どもは学力が高い傾向にある。
 ○読書量(読み聞かせ量)の多い子どもは学力が高い傾向にある。
 ○体験活動が多い子どもは学力が高い傾向にある。
 ○家での学習量が多い子どもは学力が高い傾向にある。

 課長が言っておられたことに近いことを、話してきました。
 終わりに、体験活動と親子の会話について少しお話しします。
 私が言います体験とは、「心を揺り動かす体験」のことです。私はこのことを「情動体験」と言い表しています。
 夏に行われる花火大会でのできごとです。小学校低学年位の子ども連れの親子がいました。子どもが、「うわー、きれい」「うわー、音の大きか」と言ってみています。傍らのお母さんも子どもと一緒に、「うわー、きれい」と言って親子で花火を楽しんでいました。ちょっと場所を移動しますと、同じような年格好の親子がいました。やはり、子どもは「うわー、きれい」「音が大きい」と言っていました。それをお母さんは、「せからしか、黙って見きらんとね!」と子どもの感動をたしなめました。この2組の親子、どちらが心を揺り動かす体験、情動体験を体感したでしょうか。毎日の生活の中で、心を揺り動かす体験をさせて欲しいと思います。感動する子になります。
 会話の大切さですが、東北大学の川島隆太先生は、脳を活性化させるためには、「簡単な計算をする」、「文を声に出して読む」、「会話をする」の3つをあげておられます。簡単な計算や文を声に出して読むは、学校に入学してからのことですが、会話は、すべての子どもたちに当てはまります。
 お子さんは、お母さん方が夕ご飯の準備で忙しい思いをしているとき、「ねえ、ねえ、ママ、聞いて!」とよく言ってくるでしょう。
 こんなときどうしていますか?「なに、なに、どんなことなの?」と聞いてやっていますか?
 それとも、「今、ママは忙しいの。後で」と言っていますか?
 「後でね。テレビでも見ていなさい」というときは、たいてい、「後で話を聞く」という子どもとの約束を忘れてしまっています。こんなことが続くと、子どもは親と話をしようと思わなくなってしまいます。
 「ママ、ママ、話を聞いて!」と言ってきた時、「ママは、今、忙しいの。○分ばかりしてから話を聞くからね」と約束をしたらどうでしょう。そして、一段落したら、ゆっくり子どもとの会話を楽しみましょう。子どもは「包み込まれ感覚」を実感します。親子の絆が深まります。子どもも親も脳が活性化します。
 時間が来てしまいました。ドロシー・ロー・ノルトの「子は親の鏡」には触れることができませんでした。とても大事なことが書いてあります。是非目を通してください。そして、これを台所か居間に、張っておいてください。ちょっと、いらいらしたりしたとき、是非読み直して欲しいと思います。
 皆さん方のお顔を拝見していますと、とても穏やかです。笑顔で私の話を聞いていただきました。私が自分で言うのもおかしな事ですが、私が話していますことはよく耳に入っていることと思います。
 みなさんが私の話を熱心にしかも平穏な気持ちで聞いていらっしゃるように、子育てに平穏な気持ちで熱中できているのは、夫婦の仲、家族の仲がよいからだと思います。家族の仲、特に両親の仲がよいと、子どもたちは明るく元気に育ちます。両親がケンカなどしているときは、子どもたちの顔は下を向きがちです。
 家族仲良く、子育てに当たり、人吉幼稚園児一人一人が心豊かな子どもに育ちますよう念じて話を終わります。
 ご静聴、ありがとうございました。





        感想

○ 高校の教師をしています。
  幼児教育を学ぶことで、高校生のつまづきを方向付けることができるそうです。玄関のおじいちゃんの行動は上からの指示ですね。しかし、自分で行動することが大切なのですね。
  食事の重要性が分かりました。

○ とても勉強になりました。
  自分が忙しくバタバタとしている時、どうしても子どもの話を後回しにしてしまいますが、子どもと話して時間を決めて待たせるようにしたいと思います。
  子どもの自尊心を育て、大きな広い心で子育てをしていきたいと思います。

○ 理想と現実の差に悩みつつ、できるだけ理想へ近づけるよう努力したいです。頭では分かっていても実行することはむずかしいです。

○ 改めて育児、しつけを見返すいい機会になりました。

○ ありがとうございました。
  子どもが大きくなって、ほめる、認めることが少なくなったように思います。今日、家に帰ったら意識して褒めたりしてあげたいと思います。

○ 読み聞かせの大切さに改めて気付きました。3人の子どもたちにどんどん読み聞かせをしたいです。

○ 躾・・・難しいです。靴の話で、長男(5歳)に対して手をかけすぎている・・・自分に気付きました。つい、手が出、口が出ます。反省しました。

○ 知識として知ってはいましたが、すっかり忘れていることもあり、再認識することができました。

○ 子育てに対する考え方が同じでした。娘に自信を持って、子育てするよう伝えたいと思います。

○ 毎日の生活の再認識ができ、大変よかったです。とてもわかりやすく楽しくお話を聞けてありがたかったです。ありがとうございました。

○ 自分の都合に合わせて、求めてしまうことがあります。「子どもの立場に立ってみる」を心に留めて置こうと思いました。しっかり褒めてあげたいと思います。

○ 躾が身についたら躾糸をとる・・・という話、目から鱗でした。いろいろな躾糸をはずすことができるよう、子どもと一緒に成長していけたら・・・と思いました。ありがとうございました。

○ 子どもにとっての生活習慣、そして家族との関わりが大切なことだと改めて実感しました。
  親としてのプレッシャーに負けず(考えず)親子で育ち合っていきたいと思います。楽しく前向きに子育てを頑張ります。ありがとう ございました。

○ 読み聞かせが大切だというのは知っていましたが、今日、改めて読み聞かせを続けて行こうと思いました。とても良い話を聞かせていただきました。ありがとうございました。

○ たくさんの絵本の読み聞かせをしたいと思いました。

○ 大変良い講演でした。参加して本当に良かったです。

○ 夕食の準備の時に、「あとで」とテレビに子守をさせていました。耳が痛かったです。早速今日から約束をするようにしたいと思います。
  読み聞かせもですが、今日からはじめられることをたくさん教わりよ   かったです。ありがとうございました。

○ 小学6年生と年中の子の母親です。年の差がある子育てにいつも悩まされていますが、今日の話を聞いて感動とやる気が出てきた気がします。頑張ります。

○ 3人の子どもたち、毎日バトルを繰り広げているのでとても参考になりました。心を広く愛情を持ってたくさん会話をしたいです。

○ 大変勉強になる話を聞けて、参加して良かったです。
  1時間半弱があっという間に感じました。具体例を話していただき分かりやすかたったです。
  毎日、イライラすることもあります。早速この表を目に見えるところに貼って、いろいろ、教えていただいたことを実践していきたいと思います。ありがとうございました。

○ 楽しくお話を聞くことができました。子育ては大変ですが、楽しんでやっていきたいと思います。

○ 楽しみながら大切なお話をたくさん聞けて良かったです。

○ お孫さんの話、体験を含めて話してくださったので、とてもわかりやすく勉強になりました。

○ 楽しい話ばかりでわかりやすくとてもよかったです。子育てはとても楽しいものだと感じました。やることはやっておきたいと思います。

○ 子育てに大切なことを具体的に聞け、自分の子育てに取り組もうと思います。

○ 自分の子育てを先生のお話を聞いて、再度振り返ることができました。今日から一つでも実践できるよう心がけて行きたいと思います。

○ ドキッとするような心当たりのあることが所々ありました。
  家庭での役割分担や読み聞かせ、今日からできることがたくさんあったので、早速やってみようと思います。子ども自身にやらせる、なかなかゆとりがないとでき ないですが、大事なことですね。
  頑張ります。

○ 子育てについて一番聞きたかったことが聞けたような気がしました。

○ ご自身の体験をふまえ、話されて、おもしろかったです。不安なことばかりですが、話を聞いてよくしていこうと思いました。